ギアナレポート 2日目後半(2018年10月18日午後)

前半はこちら:ギアナレポート 2日目後半(2018年10月18日午後) https://tokyo.tobimono.org/archives/505

大変お待たせしました、ギアナレポートの続編をお送りします。今回は10月18日の昼食からです。

昼食は職員用のレストランだった。記者証を見せると無料になるのだという。
ビュッフェ方式で食べたいものを取っていく。ホットサンドを取り、サラダを取り、飲み物を取り、さて会計と思ったら
「メインディッシュはどうしますか?」
既にお腹いっぱいになりそうな量を取っているのだが……この上にメインが付くとはなんともはや!

ごちそうさまでした。
いざ、午後の取材ツアーへ。

食後のコーヒーもそこそこに、次の場所へ移動。アリアン/ヴェガロケットの打ち上げ管制施設(Centre de Lancement N˚3)である。

日本で言えば発射管制棟LCCに当たる施設で、普段は背後のガラス越しに見学することになるが、この時は作業の合間のため、ちょうど人もいなかったために実際に管制作業を行う部屋まで入ることが出来た。
厳重なセキュリティゲートをくぐっていざ中へ。
室内には机とモニタが整然と並び、射場系、機体系のように分担ごとに固まって配置されている。壁面にはプロジェクタ投影用の大型ロールスクリーンが3枚とカウントダウンクロック、そしてアリアンスペース社のロゴマークがあった。


同じ建物にヴェガロケットの管制室があり、こちらはガラス越しに見ることができた。

ヴェガ管制室入 口
ヴェガ管制室内部1
ヴェガ管制室内部2

次に向かったのは機体組立棟(BIL:Bâtiment d’Intégration Lanceur)だ。ここはコア機体と固体ロケットブースタ(EAP)の結合を行う建物。
コア機体とは第一段・第二段をいい、この左右に一本ずつEAPを装着する。フェアリングや衛星は、BILの次に送られるBAFで搭載されるので、ここでは「首なし」の状態までの組立を行うことになる。
中に入ってまず目を惹いたのは、移動発射台の大きな台車である。鉄道方式で移動するのだから、必ず台車を履いているのだが、ロケット+発射台の重量を支えねばならないので車輪の数も多い。その上に発射台がそびえている。ロケットはまだ載せられていないので、細かいディティールを見て取ることが出来た。
BAF見学ではじっくり見られなかった牽引フック、それと発射台下面が見られたことも収獲だった。

BILの固体ロケットブースタ搬入口
発射台とブースタ搬入扉の内側
「首なし」のアリアン5。BILではこの状態まで組み立てる。
BILに置かれた発射台と整備床。右側の縦長の格子窓がある部分がBAFへの搬出扉。(クリックでパノラマ写真が開きます)
発射台の牽引フック(機体搭載の有無で使うフックが変わる)
発射台下部。剥がれつつあるESAのマークが打ち上げ頻度の高さと、使い込まれた様子をうかがわせる。画面右奥の、白く縦長の部分が、コア機体の搬入扉である。人との対比にも注目。
作業用の移動式足場。

次の見学は、建設中のアリアン6射点である。
バスの中で靴上から装着するタイプの安全靴を渡され、その場で装着するよう促される。降車すると、象牙色の目の細かい砂埃が舞い上がって鼻腔にまとわりつく。
ガレージのような建屋で概要を聞いてから実際に射点を見るという流れだった。

説明を聞く

アリアン6での主なオペレーションの変更点を以下にまとめておく。
・BAFと射点の一体化(衛星とフェアリングは射点で搭載)
・コア機体とブースタは、機体組立棟から横倒しで射点兼最終組立棟まで運ぶようになる
・射点は移動せず、建屋の方がレール上を走って待避する。(日本のH-Iまでと同様の方式)

横倒しで運搬するのが特徴だが、この点は「ソユーズのオペレーション経験から、横倒しにする効率の良さを学んだ」とコメントがあった。

射座両脇に作られた煙道の巨大さが印象に残る。ほぼコンクリート打ちは終わっていた。以下に写真を載せるが、人の大きさとの対比を見て欲しい。

煙道の末端部。右下の人とのサイズ差を見るべし。
煙道内部。最下部にショベルカーがいるが、ミニカーのようにしか見えない。

射座を覆う建屋はまだ鉄骨組の状態であった。その重さはエッフェル塔と同じだという。また、地面は未舗装である。

射座、即ちローンチテーブル。据え置き型なので基礎をがっちり固めている。
最終組立棟は鉄骨組み立て中の状態。
右から煙道末端、給水塔、射座、最終組立棟(射点を覆う)。
機体組立棟。ここで横倒しの状態で組み立て、専用の台車で射座まで運搬する。直立させるのは射座である。
アリアン6射点建設現場パノラマ(ほぼ270度。クリックで大きいサイズが開きます)

バスに戻ると若干脱水気味。渡された500mlの水をほぼ一気飲みだった。
本日最後の見学は、アリアン5射点(ZL3)の近接撮影だ。およそ350mの所から、射点に据え付けられた機体を撮影する。正面からのシンメトリーが美しい。

ステッカー部分を拡大。関係者の寄せ書きがあります。(クリックで大きい画像が表示されます)

非常に濃密な一日だった。この取材は2018年10月18日、整理して記事にしたのは2019年1月3日というところに、その密度を感じていただければと思う。
(参考記事:宇宙センターを見学、組立棟にはBepiColombo用の機体も 大塚実/マイナビ)

(記事:金木利憲)