イプシロンSロケット第2段モーター再地上燃焼試験爆発事故記者説明会

12月5日、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)はイプシロンSロケット第2段モーター(E21)の再地上燃焼試験で発生した爆発事故について記者説明会を実施し、原因の調査状況についての報告があった。

イプシロンロケットプロジェクトマネージャ・井元隆行(左)、理事/宇宙輸送技術部門長・岡田匡史(右)

 ご存知の通り2023年7月に秋田県能代市にある能代ロケット実験場で実施した第2段モーターの燃焼試験で爆発事故が発生、その後原因を特定し対策を行って実施した再試験でも爆発し、2回連続の失敗となった。

 今回の記者説明会は2回目の爆発事故から日が浅いこともあり、これまでに判明している事象に関しての説明がメインとなっていた。

燃焼圧力のグラフ。©JAXA

 2回目試験の結果は、燃焼圧力が予測値よりも高かったことがすでに判明していたが、今回の説明会では詳細なデータが配布された。そのグラフを見ると前回同様におよそ20秒あたりから予測値との乖離が大きくなっていった状況であることが分かる。

爆発時の画像。発光のあとから燃焼ガスのリークが始まっている。©JAXA

 その燃焼試験をノズル側から撮影していた動画からの画像も公開された。爆発の0.3~0.4秒ほど前から燃焼ガスと思われる気体が計測機器の隙間からリークしている様子が映し出されていた。燃焼圧力が少し低下したグラフのデータと時間軸は一致しており、リークしていたとすれば合点がいく。

 井元氏によれば、前回の能代での試験では『正常から異常への変化が瞬間的に発生した』ので、燃焼ガスのリークは発生していないとのこと。ただし、今回の試験でもこの燃料リークで爆発したとはまだ断定できておらず、燃焼リークは別の発生した原因が元になっている可能性もあるため、今後の解析を待つ必要はあるだろう。

 燃焼圧力グラフを見ると、前回の能代の圧力と同じような推移を辿っていることはわかるが、原因とされ対策が行われたイグナイタとイグブースタは現場から回収でき、これから詳しく調査段階とのこと。現場で見た限りでは、イグブースタについては溶融していないことが確認されたが、イグナイタにはシール方法が変更されおり、それの燃焼結果についてはこれから調査解析していく段階である。

 現時点では『なぜ燃焼圧力が予測値より高くなったのか』『なぜ最大許容圧力以下で爆発したのか』という問題点は前回と今回で共通した現象である。イグナイタ周りの対策が果たして正しかったのか、それとも別な要因で今回の事象になっているのか、それは現時点では不明である。今後の解析を待ちたい。

文:岡澤 知行