イプシロン4号機 打上げレポート

東京とびもの学会では、イプシロン4号機の打上げ取材を行いました。

まず、今回の打上げ概要をまとめておきます。
イプシロンロケット4号機では7機の衛星を同時に打上げる。

  1. 複数衛星搭載構造(超小型衛星3機搭載)、キューブサット放出機構(3UサイズX2)
  2. 複数衛星の分離に対応したアビオニクス、フライトシーケンス。
    太陽同期軌道に投入する。

    1. リフトオフ:0秒
    2. 第1段燃焼終了:108秒
    3. 衛星フェアリング分離:151秒
    4. 1段分離:161秒
    5. 2段分離:390秒
    6. 3段分離:594秒
    7. 小型実証衛星1号機(RAPIS-1)分離:3115秒(51分55秒):高度514km
    8. 超小型理学観測衛星(RISESAT)分離:3800秒(63分20秒):高度510km
    9. Micro Dragon分離:3900秒(65分00秒):高度511km
    10. 多機能展開膜実証3Uキューブサット(Origamisat-1)分離:4000秒(66分40秒):高度512km
    11. アマチュア通信技術実証衛星(NEXUS)及び月探査技術衛星(Aoba VELOX-IV)分離:4100秒(68分20秒):高度514km
    12. 人工流れ星実証衛星(ALE-1)分離:4200秒(70分00秒):高度516km

 

取材は、2019年1月15日、内之浦宇宙空間観測所にてイプシロンロケット4号機/革新的衛星技術実証1号機の打ち上げ前プレスブリーフィングから始まります。基本的に打上げ2日前に行われるものであり、どのようなロケットでどのような衛星をどのように打上げるのかの説明と解説を行うものです。

宇宙航空研究開発機構(以降JAXA) 第一宇宙技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行氏(左側)と、JAXA 研究開発部門 革新的衛星技術実証グループ長 香河 英史氏(右側)

今回の登壇者は、宇宙航空研究開発機構(以降JAXA) 第一宇宙技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行氏と、JAXA 研究開発部門 革新的衛星技術実証グループ長 香河 英史氏のロケット側と衛星側の責任者となっています。

冒頭に井元氏から打上げ延期についての発表(同時に広報よりリリースの配布)がありました。
予定していた17日は、氷結層が厚い予報が出ているが翌18日の天候が非常に安定しており打上げ日和になりそうということで、万全を期すという事で打上げ日を変更した、打上げ時刻帯に関しては変更はない、とのこと。

続 いて質疑応答が行われました。以下各々の質問は省略しますが、まとめると…

  • 打上げ成功タイミングは全部の衛星が分離して軌道に乗っていることを確認した段階になる。
  • RAPIS-1についてはリアルタイムで衛星分離を確認、その他の6つの衛星はリアルタイム受信ではなく日本上空に戻ってきたときにデータを取得する。
  • RAPIS-1は分離したこと、所定の軌道に投入したことを確認、その他の衛星については分離を確認してRAPIS-1が所定の軌道に入っていれば他の物も適切な軌道に入っていると判断する。
  • 各衛星は該当機関がそれぞれの地上局で追尾する。
  • 氷結層の中をロケットが通過すると、直撃雷を受けたと同じ状態になる可能性がある。雷がロケットを通ると電子機器に異常が発生する可能性があるために延期を決めた。どうして氷結層の中を通ると雷と同じ効果になるのかは、ネットなどで調べてほしい。

記者会見は以上で終了、打上げ前ブリーフィングは明日は行わず、取材は18日早朝から再開となりました。

ランチャー旋回を終えて打上げ最終チェック中のイプシロン4号機

そして18日早朝、報道席からイプシロン4号機のランチャー旋回を見守ります。日に照らされて綺麗に浮かび上がる白い機体は初号機以来なので、強化型イプシロンとしては最初の日中打上げになります

2019年1月18日9時50分20秒(JST)内之浦宇宙空間観測所よりリフトオフ。

カウントダウンは滞りなく進行し、予定通り2019年1月18日9時50分20秒(JST)にリフトオフ、雲ひとつ無い青空で、1段目燃焼終了まで目視で追従できるほどでした。

打上げ後の記者会見で握手する、宇宙航空研究開発機構 理事長 山川 宏氏(左側)と文部科学省 研究開発局長 佐伯 浩治氏(右側)

打上げ後の記者会見で、JAXA山川宏理事長は「打上げと衛星の分離に成功し、大変ほっとしている。先進的な技術を持ちながら宇宙空間での実験の場がなかった企業などに、機会を提供できたのは大きな成果だ。一度の打上げで、多数の衛星を軌道に載せることができるロケットは効率的で、今後、衛星産業の国際競争力の強化や、民間の宇宙利用の拡大につながることを期待したい」と話しました。
その後の技術的会見で、ロケットは正常に飛翔しすべての衛星を正常に分離したことを確認できたことが発表された。今後各衛星運用者から発表があるので、その情報をもって衛星の健全性を確認していきたい、とのこと。

これにて『平成最後の衛星打上げロケット』は成功裏に無事終了しました。

※ALE-1は18日に地上局との通信が正常に行えることが確認されました。
※MicroDragonは18日の21:00頃にTwitterで生存が確認されたと一報が出ました。
※Origamisat-1は18日10:00pmのパスでアップリンクに成功したと一方が出ました。
※NEXUSは18日11:23pm頃のパスでアップリンクに成功したと一方が出ました。
※19日、RAPIS-1はクリティカルフェーズの終了のリリースが出ました。