はやぶさ2 再突入カプセル地球帰還取材(2) カプセル分離・退避マヌーバ

 2020年12月5日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は『小惑星探査機はやぶさ2』の地球帰還カプセル分離・退避マヌーバ運用を行った。その様子を宇宙科学研究所(ISAS)のプレスセンターで取材した。

メディア対応のためプレスセンターに常駐していたJAXA 宇宙科学研究所 久保田 孝 教授

 前日行われた会見のとおり順調に運用は続いており、今回の取材時間は帰還カプセルをはやぶさ2本体から分離し所定のコースへ投入後、はやぶさ2本体を地球大気圏突入コースから離脱させる運用を行う予定となっている。

カプセル分離・地球圏離脱運用のシーケンス(12月5日)(credit:JAXA)

 プレスセンター開場時の13:30時点で、すでにはやぶさ2はカプセル準備姿勢へ推移しており運用は順調に進んでいるとJAXAからアナウンスがあった。主要メンバーは管制室に詰めており取材陣もWEB中継の画面を見ながら逐一報告する形態のため、メディア対応としてJAXA 宇宙科学研究所 久保田 孝 教授が常駐しており質問がある場合は受付けてくれる体制となっていた。

 14:13、はやぶさ2をカプセル分離姿勢へ変更実施し動作が正常に行われたことが確認された。これで帰還カプセルはオーストラリアのウーメラに着陸するコースに向けられたことになる。

 14:30、帰還カプセル分離。すぐに分離シーケンスが完了したことが伝わってきたが、それだけでは正常に分離されたのか確定できないので、他の要素を同時に確認して慎重に判断していた。

 14:35頃、津田雄一プロジェクトマネージャより

  • 分離シーケンスがすべて完了した
  • 分離した際に発生する反動による減速をドップラーレーダーで確認できた
  • 分離した際に発生する振動に対してリアクションホイールの回転数が変化した
  • はやぶさ2とカプセル本体を繋いでいるケーブルを切断する際に使用した火工品により温度上昇が確認できた

 上記4点確認できたことによって無事にはやぶさ2本体から帰還カプセルが分離されたと報告があった。

帰還カプセルの分離が確認できた直後の管制室。(プレスセンター内モニタ:映像(C)JAXA)

 管制室では祝福の拍手とガッツポーズが出たが、すぐに次の離脱運用に向けての準備に入った。

 15:30、TCM-5第1回目噴射。噴射時間は30秒。続いて16:00にTCM-5第2回目噴射。噴射時間は30秒。この段階で地球大気圏突入するコースからは外れて宇宙空間へ飛び出す軌道に乗ったとのアナウンス。

 そして16:30、TCM-5第3回目噴射。噴射時間は25秒。1回目と2回目の軌道を確認して噴射時間を短くしたとのこと。全ての動作を確認し、TCM-5の成功がアナウンスされた。

TCM-5成功後の記念撮影の様子。(プレスセンター内モニタ:映像(C)JAXA)

 はやぶさ2は、このあと地球の影に入る。その際に帰還カプセルの火球を撮影する予定で、その姿勢変更がこのあと予定されているので管制室は喜びの中次の作業に徐々に戻っていった。

 次はいよいよ帰還カプセルの地球大気圏突入である。

(文:岡澤知行)