2014年3月11日(月)、三菱電機鎌倉工場で行われた先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)報道公開に参加してきました。
「だいち4号」は名前の通り地球観測衛星「だいち」(ALOS)シリーズの最新衛星で、「だいち2号」(ALOS-2、2014年打ち上げ)の後継機となります。Lバンド合成開口レーダ「PALSAR-3」によって全球のレーダ観測を行うほか、AIS受信機「SPAISE3」を搭載し船舶自動識別システムの実験を行う計画です。打上げは2024年度の予定となっていますが、具体的な日程は未定です。
なお、「だいち4号」が打ち上がっても「だいち2号」は退役せず、可能な限り観測を続けていく計画です。
現在運用中の「だいち2号」のレーダは分解能3m、観測幅50kmですが、4号では分解能はそのままに観測幅を200kmに向上。このため、1回帰(14日間)で日本全域をカバーできるようになり、日本付近を最大で年20回程度観測可能となりました。1年をおよそ52週、1回帰を2週間とすると理論値では26回の回帰がありますが、うち6回は緊急時等不測の事態に備えた観測スロットとして確保してあるとのことです。
レーダの周波数はLバンドであり、これは日本初のSAR衛星である「ふよう1号」(JERS-1)から一貫して変わっていません。他のSAR衛星で使われるXバンドやCバンドに比べ波長が長いため木の枝葉などを透過する性質があり、植物が多い地域でも安定して地表面を捉えられるのが選定理由です。
なお、今回SARアンテナは5枚のパネルから構成されていますが、厳密には同じ構造のパネルは1枚もないとのこと。外見は同じ形に見えても、パネルに内蔵されたに電源系や発信系の配置や配線が異なるとのことです。
アンテナパネルから突き出した金色の「トゲ」は、打ち上げ時にパネルが開かないよう固定しているボルトと、そのボルトが切り離し後に飛んでいってデブリとならないよう受け止めるボルトキャッチャを兼ねた部品とのことでした。
宇宙基本計画工程表上は、リモートセンシング活用による国土強靱化の一翼を担う衛星であり、将来的にはALOSシリーズを民間小型SAR衛星コンステレーションで補完することによって、およそ3時間に1回の頻度で観測が可能となることが期待されています。
高分解能となることで「だいち2号」に比べてデータ量も3~4倍となりますが、Kaバンドや光衛星間通信機能を搭載し、通信速度の向上を図っています。地上局は、国内ではJAXAの筑波宇宙センターと地球観測センター、海外では民間局を利用する計画です。
「だいち2号」ではXバンド直接伝送系1系統で0.8Gbpsの通信速度だったところ、4号ではKa直接伝送系を2系統搭載し、1系統で1.8Gbps、2系統を束ねて3.6Gbpsを実現しています。光衛星間通信の速度は1.8Gbpsとのこと。
打ち上げ時は太陽電池パドルを下(ロケット側)、SARアンテナを上にした姿ですが、観測時は180度逆となり、SARアンテナが下(地球側)、太陽電池パドルが上になります。
最後に、資料写真をまとめて掲載します。ふだんは見ることのないフライトモデルの写真ですから、興味ある方の参考になればと思います。
(記事:金木利憲)