三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)と、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は2024年3月21日(木)、愛知県海部郡飛島村にある三菱重工飛島工場で、H3ロケットコア機体を公開しました。
コア機体とはH3ロケットを構成する部分のうち、1段と2段、そして1段と2段を結合する段間部を指します。
コア機体以外の部分、衛星を保護するフェアリングと固体ロケットブースタは別の場所で製造されているため、それぞれ種子島宇宙センターに運び込まれた後、コア機体に組付けられます。
今回公開されたコア機体のうち、1段は3号機に使用されますが、2段は3号機より後に打上げられる機体に用いられます。また、3号機の2段は既に種子島宇宙センターに搬入済のものが使用されます。この1段と2段の「ずれ」は、試験機1号機の打上げ失敗による打上げ計画見直しにより、2番目に製造された1段のLE-9エンジンが3基あるH3-30の打上げが後回しとなったために起きたと考えられます。
種子島宇宙センターで完成したH3ロケット3号機は、打上げの前に極低温試験を行います。極低温試験とは、機体と射点設備を組み合わせて打上げまでの作業性や手順を確認する試験です。極低温の推進剤(液体酸素と液体水素)をロケットに充填し、打上げ直前の状態までのリハーサルを行うことからこのように呼ばれます。
極低温試験では、新たに追加された機体把持装置という機体移動時の機体の揺れを抑える装置の検証が行われます。
東京とびもの学会取材班が含まれる取材グループは、まず1階の作業フロアに案内されました。
この上に段間部が取り付けられる
エンジンの奥には液体酸素タンクがある
続いて見学デッキに案内され、上からコア機体を撮影。
1階の作業フロアと会見場で三菱重工 新津真行 H3プロジェクトマネージャー、JAXA 岡田匡史 H3プロジェクトマネージャ(役職名は取材当時のもの)との質疑応答が行われましたので、いくつか紹介します。
問:現状の工場の設備では年間5~6機生産できると以前お伺いしましたが、工場を見るとギリギリのように感じました。将来的に生産数を増やすための見通しはどのようなものでしょうか。
新津PM:年間6機の生産は現有の施設で対応できる見込みです。将来的に打上げ回数を増やすためにパートナー社や種子島の施設も含めて何が必要かJAXAと共に話を進めています。全てを同時に進めることは出来ないので、優先度を見極めて進めていきたいです。
問:打上げ回数増加のために、種子島宇宙センターの第一射点(現在はH-ⅡA専用)をH3に対応するものに改修する予定はありますでしょうか。
新津PM:確かに第二射点のみでは大変なので、第一射点も改修してH3が使用できるようJAXAと話を進めていきたいです。
問:H3ロケット3号機の位置づけですが、「試験機」は付くのでしょうか。またJAXAと三菱重工の体制についてもお伺いします。
岡田PM:「試験機」は付きません。「H3ロケット3号機」と呼んで頂いて結構です。体制としては、3号機は徐々に三菱重工に移管していく出だしとなるところだと思っていて、具体的な調整を進めているところです。
問:H3ロケット3号機に搭載する衛星は何でしょうか。
岡田PM:搭載衛星は未定ですが『だいち4号』(ALOS-4)を搭載すると想定して準備しています。
問:『だいち4号』は固体ロケットブースタの無い30形態で打上げられる予定でしたが、固体ロケットブースタ2本の22形態に変更されて問題はないのでしょうか。
新津PM:早い段階で『だいち4号』を22形態で打ち上げる可能性について検討を進めていました。振動等の条件は30形態に比べ厳しくなりますが、問題ないことを確認しています。
問:ロケットが22形態に変更されたことにより打上げ能力に余裕が生まれると思いますが、『だいち4号』以外の衛星を相乗りさせることは検討していますか。
新津PM:『だいち4号』以外の衛星を搭載することは考えていません。
写真:渡辺祥馬
今回公開されたコア機体は3月30日(土)未明に種子島宇宙センターに搬入されました。
H3ロケット3号機は試験機2号機に続いて打上げ連続成功となるか注目されます。
文:樋口厚志
写真(特記以外):霧島、樋口厚志