2025年11月18日、日本電気株式会社(以下、NEC)本社で準天頂衛星システム「みちびき」に関するメディア向け説明会が開催されました。
説明会には会場となったNECを始め、内閣府、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)、三菱電機株式会社(以下、三菱電機)が参加し、プレゼンテーションと質疑応答、展示が行われましたのでその様子を紹介します。

内閣府プレゼンテーション 準天頂衛星システム「みちびき」 ~ いよいよ7機のフル体制に!
・いよいよ、7機体制へ(フル性能を発揮!)
「みちびき」は、アジア・オセアニア地域に特化した衛星測位システム。
準天頂軌道(3機)と静止軌道(1機)の4機体制で運用中(今年夏から5機体制に)。
位置情報と時刻情報を含む測位サービス提供。災害危機管理メッセージも配信。
みちびきの5~7号機を2025年度までに打上げ、7機体制を構築予定。7機体制では他国のシステムに頼らずに、「みちびき」のみで測位が可能に。
・幅広いサービス
①衛星測位サービス
7機体制の構築により、「みちびき」のみで測位を可能に
将来、開発中の高精度測位システム(ASNAV)による測位制度の大幅な向上が期待
②測位補強サービス
補強情報による測位精度の向上(専用受信機が必要)
> センチメータ級(CLAS)、デシメータ級(MADOCA-PPP)、サブメータ級(SLAS)、航空管制用(SBAS)など
③メッセージサービス
災害危機管理通報サービス(専用受信機が必要)、衛星安否確認サービス
・活用事例
紙や人の記憶に頼っていた水道メーターの位置を、SLASに対応したスマートウォッチを活用し従来の検針業務中に自動的に記録。
CLAS測位による災害査定で災害からの復旧を早期化。
自治体による除雪、除草の省力化。
自動車分野、ドローン分野、農業分野、インフラ分野にも活用。
> 「みちびき」は、日本のスマートな未来社会に貢献
・これからの展開(新しいサービス)
信号認証サービス(偽信号・なりすまし対策)
測位信号に含まれる広報メッセージが本物であることを電子署名技術により証明する「信号認証サービス」を2024年度から運用開始。
(準天頂衛星に加えGPS、Galileoの測位信号も認証)
・これからの展開(技術開発)
今後の取り組みの方向性
①精度、安定性、機能性向上
②信頼性向上、抗たん性の強化
③システム維持更新・運用コスト低減
高精度測位システム(ASNAV:Advanced Satellite Navigation system:アスナブ)
>詳細はJAXAプレゼンテーション参照
・これからの展開(7機から11機体制へ)
7機体制で「みちびき」のみで測位が可能となり、受信範囲が広がり測位精度も向上。しかし、7機は必要最低限の機数で、1機でも故障すると測位機能を維持できない。
11機体制では、どの1機が故障しても測位機能を維持できる。
・まとめ
①2026年度から、「みちびき」は7機体制に
②デジタルトランスフォーメーション、地理空間情報高度活用社会(G空間社会)に向けて、GPSを超えるサービスを提供
三菱電機プレゼンテーション 準天頂衛星システムの提供サービス「センチメータ級測位補強サービス(CLAS)」の概要
・「みきびき」での三菱電機の担当
衛星バス(DS2000)システムと、センチメータ級測位補強サービス(CLAS:シーラス)を担当。
・CLASとは
Centi-meter Level Augmentation Service の略。
衛星測位における誤差を補正するための測位補強情報を配信し、センチメータ級測位を可能とするサービス。
CLAS対応受信機搭載機器があれば、全国で誰でも無償で利用可能。
センチメータ級測位で実現できる自動化・省力化により、人手不足・高齢化などの社会課題の解決に貢献(ドローン、農業分野、自動運転など)。
・CLASの課題
太陽フレアによる宇宙環境の変動で精度が低下すること。対策としては、誤差を補正できる衛星を増やし、安定した高精度測位・可用性を向上。
JAXAプレゼンテーション 準天頂システム「みちびき」事業におけるJAXAの取り組み
・「みちびき」初号機の開発・実証
日本独自の測位衛星として2010年9月11日打上げ。GPSの測位可能時間と精度を改善。
・4機体制時の関り
2011年9月11日から2017年2月28日の間、測位サービス運用を実施。その後内閣府に移管(みちびき2号機は2017年6月1日打上げ)。
初号機開発・実証の知見を元に技術支援を実施。
・7機体制構築における役割
2017年から、7機体制に向けた新規衛星に搭載する測位精度向上のための新技術開発に着手。
高精度測位システム(ASNAV)の開発、およびその実証運用を担当。
・ASNAVの概要
従来の「みちびき」システムに衛星間測距機能と衛星/地上間測距機能(高精度測距システム)を加え、より正確に衛星の位置と時刻を特定することにより、ユーザがより正確に測位出来る仕組みを実現するもの。
将来、すべての衛星に実装されればスマートフォンのような一般的な受信器での測位制度は飛躍的に向上(現状の5~10mから1mに)。
・11機体制に向けた取り組み
ASNAV新機能による測位精度向上の実証(3年間)後に、「みちびき」のサービス信号として提供できるよう、起動時刻推定システムの実用化開発を実施中。
2025年度より新規衛星(3号機後継機、8号機)の開発に着手。

NECプレゼンテーション 準天頂衛星システム「みちびき」へのNECの貢献
・準天頂衛星におけるNECの担当範囲
NECは「みちびき」初号機から一貫して、測位ミッションペイロードならびに地上システムの開発を担当。またサービス運用を含む全体システムも担当。
・測位ミッションペイロード
衛星から測位信号を生成して地表へ送る測位ミッションペイロードを開発。
5~7号機には高精度測距システムペイロードを新規搭載。
・地上システム
7機体制では新規整備・改修した地上局・アンテナはNECが開発。
測位精度向上のため、地上間測距機能も具備。
・「みちびき」が提供するサービス
NECは「みちびき」のサービスに係る地上システムを開発。運用事業者としてユーザにサービスを提供。
衛星測位サービス、測位信号の認証サービス、災害・危機管理通報サービス、安否確認サービス等。
・「みちびき」7機体制の実現、そして11機体制に向けた開発に着手
追跡管制局や海外監視局の衛星を運用する大規模ITシステムを地球規模で構築、運用。
7機体制の実現、そして11機体制に向けて更に様々な業種・業態での利用を推進中。
・質疑応答
問:CLASとASNAVの違いは何でしょうか。
答:CLASは測位信号に加える補強信号により測位精度を高め、ASNAVは測位信号自体の精度を上げることで測位精度を高めるという違いがあります。また、CLASでは専用の受信機が必要ですが、ASNAVでは普通のカーナビやスマートフォンでの測位精度が上がります。
問:7機体制の実現でASNAVによる1mの測位精度が得られるようになるのでしょうか。
答:残念ながらそうはなりません。現在軌道にある衛星の内、4機はASNAVの機能を持っていません。
古い衛星がASNAVの機能を持った新しい衛星に置き換わることで徐々に精度が上がり、測位に必要な4つの信号を発する衛星が全てASNAVの機能を持っていれば1mの測位精度が得られるようになります。
なお、CLASについては4機体制からサービスを提供しています。7機体制になり見える衛星の数が増えることで、CLASもより安定してサービスを提供出来るようになることを期待しています。
問:みちびき5号機が打ち上がり、6機体制になって変わることはありますか。
答:機数が増えることで都市部、林間部などのあまり空が開けていない場所で測位信号を受けられる可能性が高まると考えています。
問:センチメータ級の高精度測位でなければできない事、ユースケースはどのようなものを想定していますか。
答:内閣府としても、GPSより高精度の測位に価値を感じる方、価値を見出しビジネスにする方をたくさん見つけていかなければなりません。そのために非宇宙の方ともコミュニケーションを活発にしたりスマート農業の現場のニーズを吸い上げるなど地道な作業をしているところで、今後もユースケースを知らしめていかなければならないと思っています。
問:既存のGPSや各国の衛星測位システムがある中で、新しい「みちびき」を選んで使ってもらえるような点はありますか。
答:衛星測位システムの業界では、中国やインドも含む関係諸国による会議が毎年開催されて各国の進展やニーズなどの情報を包み隠すことなく交換し協調しています。そのような中で、日本がデファクトスタンダード(事実上の標準)になれるよう、日本のメッセージサービスや認証サービスなどを使いたいところにはオープンにすると宣伝をしています。
問:「みちびき」のグローバルな展開は視野に入っていますか。
答:「みちびき」の配信範囲はアジア、オーストラリア、オセアニア諸国が含まれます。日本で作ったユースケースを世界に広めたり、逆に世界で育ったソリューションを日本に導入する取り組みにより、ガラパゴスにならないよう進めていきたいと考えています。
現在はGPSがインフラとして定着しましたが、新たなインフラとして「みちびき」がどのように整備され、どのように生活・社会に関わっていくのか理解が深まった説明会でした。
文・写真(特記以外):樋口厚志




