2019年6月25日(火)、JAXAは小惑星探査機「はやぶさ2」の、小惑星リュウグウへの第2回タッチダウンを実施すると発表した。
7月9日(火)に降下を開始し、小惑星表面に触れるのは11日(木)午前11時頃となる見込みだ。
6月11~13日に実施した低高度降下観測運用の結果を確認し、かねてよりプロジェクトチーム内部で実施の可否を含めて検討を進めていたところ、21日(金)に宇宙科学研究所内での審査を、25日(火)にJAXA経営陣の審査を通過し、実施が決まった。
決定に当たっては、機体の安全を第一とし、以下の三点が確認された。
1. 地下物質採取の科学的意義が高いこと
2. 現状の探査機で充分安全なタッチダウン運用が成立すること
3. 2回目のタッチダウンにより光学系の受光量が更に低下した場合でも、その後の運用に支障がないこと
このことについて、津田プロジェクトマネージャは「(機体の)サンプルコンテナ内には、すでにサンプルがある。我々は判断の時、(実現可能かどうか)確率で議論をする。ただ、今回は非常に貴重なサンプルが既にあるので、確率だけで議論していいのか」を悩んだという。「そのため、一般の方の考えも聞きたかった」とも述べた。また、「チーム内はどんな雰囲気だったのか、反対、賛成、ともにいたのか、それとも賛成派が多かったのか」という質問に対しては「どうやったら第二回目のタッチダウンができるか、という方向の議論ばかりだった。団結できていた」という状態だったと語った。
タッチダウン地点は、SCI運用で穿たれた人工クレータの中心から20mの、C01-Cb地点を目指す。予定している着陸精度は、半径3.5mの円内である。第一回は直径3mの円内だったので、少々条件は良くなったと言える。
地点内にはいくつか岩塊が見受けられるが、いずれもタッチダウンに支障は無いという。今回の安全基準となる高さは70cmで、第一回タッチダウンの65cmよりも緩和された。これは、燃料を使ったりSCI装置やDCAMといった機器を分離した結果、機体重量が20kgほど軽くなったため、「サンプラホーンの沈み込み量」が減ったためである。
タッチダウン地点の目立つ岩塊には「三途岩」など物騒な名前が付いているが、これは正式名称ではなく、「気になるものから嫌な名前を付けていった結果」のニックネームだという。
今回のタッチダウンで目指すのは、人工クレータ生成時に放出された小惑星内部物質の採取である。ゆえに、岩塊の上にも積もっている可能性が非常に大きく、吉川ミッションマネージャは「(岩にタッチダウンするか平らなところにタッチダウンするかで)サンプル採取量が変わるかも知れませんが、問題は無いと考えています。いまは技術の進歩も凄いですから、ごく微量でも分析することができます」と述べた。
第二回タッチダウンのシーケンスは、第一回を踏まえて作成されているため、基本は同じである。変更点は以下の3点である。
・ターゲットマーカ捕捉高度を45mから30mに変更。カメラ光量が低下したので、その分近づいて補うことにしたため。
・最終降下は、ほぼ真下に自由降下。ターゲットマーカの落下位置が良かったため、ギリギリまでマーカをカメラで見ながら機体誘導できるため。
・ヒップアップのタイミングを前倒し。前回の経験を踏まえて合理化したため。
運用の詳細は現在詰めているところであり、次回記者説明会で発表できれば、とのことだった。
7月11日に実施できなかった場合に備え、22日の週をバックアップ期間としている。想定しているのは、軽微かつはっきり分かる原因での緊急離脱や地上設備の不具合といった、探査機本体に不具合がなく、対策が短期間でできる場合だという。小惑星の温度が上がるとタッチダウンに適さなくなるため、実施できるのは7月末までとなる。成功を祈ってやまない。
(文:金木利憲)