はやぶさ2、いよいよ小惑星リュウグウへタッチダウン(3止)

第3回、最終回の今回は、サンプル採取方法と科学的意義、関係者のコメントについて書く。

過去の記事は以下の通り。
・タッチダウン地点と当日の時系列、注目ポイント:はやぶさ2、いよいよ小惑星リュウグウへタッチダウン(1)
・タッチダウン時の誘導誘導について:はやぶさ2、いよいよ小惑星リュウグウへタッチダウン(2)

1.サンプル採取方法

まず、小惑星表面に近い側から、サンプル採取機構の主要部品と役割について記していく。
・サンプラホーン:先端を小惑星表面に接触させ、小惑星表面からサンプルキャッチャまで試料を導くトンネルとなる
・プロジェクタイル(弾丸)とプロジェクタ(銃身):小惑星表面に弾丸を撃ち込み、石を砕く
・サンプルキャッチャ:舞い上がったサンプルを収納する容器

次に、タッチダウン~サンプル採取までの流れを書く。
1: サンプラホーン先端、リュウグウに接地、タッチダウン
2: タッチダウンと同時にプロジェクタイル発射機構のロックが解除され、弾丸発射(質量5g、速度は秒速300m)
3: 弾丸が小惑星表面を砕く
4: 砕かれた表面物質が舞い上がり、サンプラホーンに導かれサンプルキャッチャ内へ
5: 離陸
6: ホームポジションへの復帰途中で減速。減速時にサンプラホーン先端部のツメに引っかけられた砂礫などのサンプルがあれば宙に浮き、サンプルキャッチャ内へ。

個人的に注目したいのが、サンプラホーン先端内側に牙のように設けられた白いツメである。万一弾丸が発射されなくても、内側に折り返されたこのツメに乗った表面の岩石が、上昇途中で減速した際のマイナスGで浮き上がってサンプルキャッチャに入ることを予想し、実験によって検証済みだという。より確実さを上げるために、目の細かさの違う3種のツメが備えられており、砂礫の粒の大きさに関わらず採取できることを目指して設計されている。何があっても必ずサンプルを持ち帰るという、強い思いを見た。

実験の動画はこちらから:サンプラ サンプラホーン折り返し部微小重力実験(JAXAデジタルアーカイブス)

 

「先端部」の写真中央、内側に向け細かなギザが付いた白いリングがツメ。

2.科学的意義

「はやぶさ2」はこれまで、様々な高度でのリュウグウ上空からの観測や、MASCOTやミネルバ2という着陸機を降ろしての表面観測を行ってきた。サンプル採取は表面物質の実物を採取することであり、持ち帰ることが出来れば成分分析や分子構造の解析などを行える。大はキロメートル単位から小はナノメートル単位まで、12桁もの範囲に広がる情報を収集して研究を勧めることができる。
初代「はやぶさ」の持ち帰ったサンプルとの比較や、現在進行中のアメリカのサンプルリターン計画であるオシリス・レックスミッション(プロジェクトサイト:英語、日本語の解説サイト:月探査情報ステーション)との協力ができれば、複数の小惑星のデータを用いて似たところ・違うところの比較が可能になる。たった一つの小惑星サンプルではそこのことだけしか解らないが、二つ以上を比べられれば「なぜ同じなのか」「なぜ違うのか」という考察が可能になり、得られる知見は一気に広がってゆく。
また、「はやぶさ2」は、地球が現在のように水と生命のある惑星になった理由を探る、長期的探査計画の一端を担っている。
この計画は「いつ・どの進化段階の天体が、どのように地球に水や有機物を持ち込んだのか」という疑問を解決するために組まれた。「はやぶさ2」の他には、火星の衛星・フォボスとダイモスを観測し、いずれかからのサンプルリターンを目指すMMX(プロジェクトサイト)、欧州主導で木星の衛星・ガニメデを目指すJUICE計画への参加(日本側プロジェクトサイトESA側プロジェクトサイト:英語)、宇宙塵の分析を行いつつ小惑星3200 Phaethonのフライバイ探査を目指すDESTINY+(プロジェクトサイト)などがある。「はやぶさ2」は単独で終わる計画ではなく、これまでの、そして現在計画が進んでいる他の探査機と繋がっているのである。

太陽系探査計画と、探査機の目標地点           図:JAXA/ISAS

3.意気込みとメッセージ

記者会見・質疑応答の中で、津田PMの口から運用チームの現状や思いが感じられる言葉が現れた。そのうちのいくつかを紹介する。

「頭は冷たく、思いは熱く」(津田PM:タッチダウンの際の心境)

「牙を剥いたリュウグウだが、その形状がそれぞれ分かってきたというのが今の状況だと思っています。ですので今は攻略の仕方が分かりましたので、そのやり方に沿って間違うことなく運用を遂行する、そこに今は力を入れたいと考えています」(津田PM:タッチダウン延期の際に「リュウグウが牙を剥いた」と表現したことについて、今度こそ牙に立ち向かうことになったがどのような思いか、との質問への答え)

「実際に(はやぶさ2を)設計した身としては、本当にそのとおり動いてくれるんだろうかという、「はやぶさ2」を信じている部分と、なんと言うか、技術者として疑いの目を持つ部分っていうのがあって、たぶん当日現場でもずっと見ながらどきどきしてるんだと思います」(津田PM:タッチダウンに際して心配される点について尋ねられて)

「「はやぶさ2」は打ち上げの前から注目いただいて、寄付金カメラみたいなものも搭載できて、事前に設計した以上の魅力を「はやぶさ2」に与えていただいていると思っています。今回、リュウグウという新しい天体に行って、そこの厳しさを、われわれとしては技術的に克服しきったというふうに思っていますが、チャレンジが1回で済むかどうかはやってみなければ分からないと考えていますが、リトライも含めて最後にはタッチダウンを成功させたいと思っています。ですので引き続き注目していただければと思っています。タッチダウンだけで終わらないのがこのミッション。まだ先がありますので、クレーターを作ること、MINERVA-II2の運用、それから地球帰還まで含めて見守っていただければと思います」(津田PM:ファンへのメッセージを、と求められて)

以上3回にわたって「はやぶさ2」第一回タッチダウンの概要を述べた。当日は相模原市立博物館でのパブリックビューイングや、管制室を中心にしたネット中継も予定されているという。2019年2月21・22日は、「はやぶさ2」に注目である。

公式ネット中継

https://www.youtube.com/watch?v=WmPQmVVtE5A

相模原市立博物館によるパブリックビューイング

http://sagamiharacitymuseum.jp/blog/event/20190222haya2td/

過去の記事は以下の通り。
・タッチダウン地点と当日の時系列、注目ポイント:はやぶさ2、いよいよ小惑星リュウグウへタッチダウン(1)
・タッチダウン時の誘導誘導について:はやぶさ2、いよいよ小惑星リュウグウへタッチダウン(2)

(記事:金木利憲)