小型月着陸実証機『SLIM』月面着陸 取材

 2024年1月19日深夜から、JAXA宇宙科学研究所 宇宙科学探査交流館で小型月着陸実証機『SLIM』月面着陸実施に合わせて記者会見が行われました。
 プレスセンターが開場した23時の段階で多数のメディアが訪れており、今回の月面着陸の注目度が高いことが伺えます。

 日付が変わった20日0時からSLIMの月面着陸が開始されました。プレスセンターに居る我々もJAXAのYoutube中継しか情報がありませんので全員状況を食い入るように見ています。

プレスセンターのモニタに映し出されたテレメータ画像
SLIM管制室のようす

 SLIMは計画した軌道をなぞるように進んでいき、00:15:49(SLIM機上時間をJSTに変換)に垂直降下モード(VDM)へ移行し、順調に飛行しています。
 このときのプレスセンターはなんともいえない緊張感が漂っていました。集まった記者たちも画面を食い入るように見てはメモを取ったりレポート音声を入れたりとその瞬間を向いていました。

 SLIMは月面500mと50mでのホバリングをクリアし、00:20:02(同)、テレメトリ画面に月面着陸を示すMLMモードが表示されましたが、この段階では正式には着陸が確認できてはおらず、成果も含めてこのあとの記者会見まで待つことになりました。

テレメトリー上では月面着陸したと思われる

 ただし、止まったように見えているテレメトリ画面の時刻は動いており、この時刻は『SLIM機体上の時刻をテレメトリで受けている』のと、徐々にバッテリーの残量が減っていることから探査機は着陸し生きていることは間違いなさそうだという見解になりましたが、それ以上の詳細ははやり記者会見をもって報告ということで、一旦待機となりました。

 プレスセンターには、LEV-2(SORA-Q)の実験モデルと市販モデルが実演展示されていました。

LEV-2とSLIM模型。こんな感じで撮影できたら素敵ですね。

 市販モデルではないので金属のエッジが鋭く下手に触ると怪我をしそうなくらいの加工がされており、このへんがおもちゃと実機の差なのだな、とわかります。

 時間は過ぎてそろそろ眠気が襲ってきた頃、02:10から記者会見を行うとの連絡があり一斉に準備にはいりました。

小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸にかかる記者会見へ登壇した方々

 記者会見の登壇者は

理事長 山川 宏(やまかわ ひろし)
理事/宇宙科学研究所 所長 國中 均(くになか ひとし)
宇宙科学研究所 副所長 太陽系科学研究系 教授 藤本 正樹(ふじもと まさき)
(敬称略)
の3名。

 まず、山川理事長から挨拶があり、その後、國中所長より今回の月面着陸に関しての報告が行われました。
 SLIMの着陸は成功し、電波の送受信もできてる。たが、太陽電池からの発電が確認できていない。現状は搭載のバッテリーで運用しておりデータを地球に送信しているとのこと。降下中にLEV-1とLEV-2は正常に分離したと考えられる、とのこと。100m精度の着陸の成果に関しては当初の予定どおり1ヶ月程度かかるとのこと。

 発電していない要因としては現時点では不明だか、着陸時に機体が想定とは異なる姿勢になっていることで太陽光パネルが想定した方向を向いていないことが原因と考えられている。テレメトリデータによると、SLIMの太陽電池は西を向いていることから、今後月面で太陽光が西から当たるようになれば、発電の可能性はあり、太陽電池からの発電のみでもSLIMは動作可能とのことで今後の状況次第という。今後の続報を待ちたい。

(レポート:岡澤知行)