HTV搭載小型回収カプセル試料コンテナの記者公開

2018年11月13日(火)午前、筑波宇宙センターにおいて、ISS補給船「こうのとり」7号機(HTV-7)搭載のHTV小型回収カプセルに収められた試料収納容器(試料コンテナ)の報道公開が行われた。東京とびもの学会ではこの様子を取材することができたので、当日の様子を写真中心にまとめていく。

筑波宇宙センターへの帰還と試料引き渡し

南鳥島から空輸された収納容器と、試料コンテナを載せて茨城空港を発った運搬車は、10時42分、関係者の温かい拍手と歓声に迎えられ、筑波宇宙センターに到着した。

この収納容器とコンテナは11日未明、「こうのとり」7号機に取り付けられたHTV小型回収カプセルの中身である。

到着

バックで建物に付けた車のトランクが開けられると、二つの箱が並んで収められていた。まず試料を収めた箱が、台車に乗せられて待ちかねた様子の研究者に渡された。笑顔で握手を交わすと、建物の奥に消えていった。

回収組にねぎらいの言葉と祝福の握手
トランクオープン。右の銀色箱が試料コンテナの入った保冷箱、左のプラ箱が回収容器の入った箱。
先に試料の入った箱を降ろす
JAXA研究推進員2名(右側)笑顔での受け取り

続いて収納容器の入った箱が降ろされた。これはすぐに記者公開される手筈になっている。

 

記者会見と収納容器の公開

記者会見場に移動するとほどなく、カプセル回収の概要の説明と収納容器の公開が行われた。今回のプロジェクトの責任者であるJAXAの田辺氏も、ここで初めて期間後のコンテナを見るとのことだった。

カプセルの洋上回収のことについては、既に多く報じられているので割愛する。

回収の報告が終わると、輸送用のプラスチックコンテナが開けられ、エアクッションに包まれた収納容器が姿を現した。

輸送用容器オープン
収納容器登場

直径40cmほどの寸胴鍋のような形の収納容器の蓋を開けると、ピンク色の断熱材が現れる。断熱材を外すと、真空断熱容器が現れ、その蓋を外すと青色をした保冷剤が出てくる。保冷剤を取り除くと四角いアルミの箱が現れ、その中に専用のパッケージに梱包された試料が収まっている。
収納容器は直径40cm程度の円柱形だったが、資料を収める四角いアルミ箱は短辺20cm長辺30cmほどの直方体。その中に試料のパッケージが2個(最大で4個収納可能)収められている。

続いて容器の開梱。手順を一つずつ解説しながら実演した。

収納容器の蓋のネジを外す
ピンク色の断熱材が見える
蓋状になっている断熱材を外す
保冷容器(真空断熱容器)を取り出す
断熱容器を開けると、青色の保冷剤が見える(全部で6個ある)
保冷剤を外すと、収納箱が見える
収納箱を取り出す
収納箱の蓋を留めるカプトンテープを剥がす
収納箱内部。サンプルは既に取り出されて引き渡し済みなので、空だ。

ただし、本物は先だって研究推進員に引き渡されているので、空になっている。

本物と同サイズのダミーパッケージを入れた様子。パッケージは全部で4つ入るとのこと。

まず感じたのは、保冷の確実さである。蓋を開けた時点で保冷剤はまだかちこちに凍った状態であり、コンテナ表面にはサッと霜がおりた。ここからは断熱の確実さと、帰還後2日を経てまだ充分に冷却の余力を残した状態であることが見て取れる。
次に、容器の綺麗さである。大きな傷やへこみ、焦げなどといったものは見られず、もろい素材でできた断熱材も破損がない。これは良い状態で着水したことを意味している。
会見においても田辺氏より「とても綺麗な状態。今後状態の解析が必要だが、ダメージも少ないのではないか」との感想が漏れた。

まだ固いままの保冷剤
保冷容器の底面。断熱材が、収納容器底部の形に合うように工作されている。
一番外側、収納容器の本体内面。フチには密閉のためにゴムシーリングが施されている。
収納容器の蓋。8ヶ所のネジで本体としっかり固定される。

おわりに

今回の回収成功は、日本の技術を用いて地球軌道上から試料を載せたものを降ろしたという点では2003年8月帰還のUSERS(ユーザーズ)以来のこととなる。また、その回収に当たっては、揚力制御という点でHYFLEXの経験が活かされたともいう。この辺りは11月下旬に予定されているカプセル本体(外側)部分の公開で明らかにされることもあるだろう。まずは成功を喜び、今後の発展を楽しみにしたい。

最後にチーム長・田辺氏が強調していたことを付け加えておく。「ピンク色の断熱材に覆われたタイガーさんの保冷容器がそのまま大気圏再突入したわけではありません。収納容器に収められた上で、更に三菱さんの作った再突入カプセルに覆われて帰還します。どうも勘違いしたような報道があったので、改めてご説明しておきます」

収納容器を前に笑顔のチーム長・田辺氏(左側)、主任研究開発員・宮崎氏(左側)

(記事:金木利憲)