「はやぶさ2」カプセル地球帰還日は2020年12月6日に決定

JAXAは、2020年7月14日、地球に向け飛行中の「はやぶさ2」のサンプルカプセル地球帰還日が2020年12月6日になったと発表した。帰還場所はオーストラリア・南オーストラリア州のウーメラ。初代「はやぶさ」のカプセルを落とした場所でもある。

探査機本体は新たな星へ

初代「はやぶさ」と「はやぶさ2」の最大の違いは、「はやぶさ2ではカプセルだけが帰還すること」にある。カプセルを切り離した「はやぶさ2」本体は、新たな探査目標に向け地球圏を再離脱する。

実は、初代「はやぶさ」でも同様の運用計画があったのだが、相次ぐトラブルで探査機へのダメージが大きく、カプセルの帰還を優先し断念した経緯がある。

もちろん今回もカプセル帰還の方が優先順位が高いため、仮に大きなトラブルが起こった場合には本体の再離脱をあきらめることもあり得る。計画はあくまで現在のものだ。

地球帰還までの運用

2020年7月14日現在、「はやぶさ2」は地球から9200万kmの位置を秒速23.9kmで飛行している。5月12日以来、帰路の第二回イオンエンジン運転(TCM-0)が続いており、これは9月中旬まで続く。今はちょうど折り返し点のあたりだ。

10月になると最終誘導フェーズに入る。ここからは化学エンジンを用いて軌道の微修正を行っていく。9月までのイオンエンジンによるものも含めた一連の軌道修正マニューバはTCMとよばれ、TCM-0~5までの6段階に分かれる。

TCM-0はイオンエンジンが担当し、それ以降は化学エンジンが受け持つ。TCM-1・2で地表高度200kmを通過する軌道に投入し、TCM-3でウーメラに向けた軌道変更を行う。TCM-4で最後の誤差修正を行ってカプセル分離、TCM-5で探査機本体はエスケープ軌道に入って地球を離れることになる。

各マニューバの具体的な日時は7月14日現在未定とのことだった。

カプセルの大気圏再突入と回収

再突入から着陸までの流れ 画像:JAXA
カプセル各部の分離イメージ(「はやぶさ」のもの) 画像:金木利憲

探査機から切り離されたカプセルは、第二宇宙速度(今回は秒速約12km)で大気圏に再突入する。カプセル自体に軌道変更を行う機能はないため、いかに正確な軌道に入るように切り離せるかが成否の鍵を握る。

高度約200kmで再突入を開始し、高度約10kmで全面・背面のヒートシールドを切り離してパラシュート展開を行う。ヒートシールドはそのまま飛び去り、カプセル本体はパラシュートに吊られ、ビーコン電波を発信しながらゆっくりと着陸する。

各フェーズの追跡計画 画像:JAXA

再突入から着陸までは「火球フェーズ」「落下傘フェーズ」「地表探査フェーズ」に別れていて、それぞれ異なった方法でカプセルを追跡していく。
・火球フェーズ:地上および航空機から再突入時の光を光学観測
・落下傘フェーズ:5つの地上局でビーコンを受信し、更にマリンレーダを用いて距離と方向を計測する。
・地表探査フェーズ:着地後のビーコンを頼りにヘリコプターで目視探索。また、ドローンによる探索も計画されている。

最終的には本体・前面ヒートシールド・背面ヒートシールド全ての回収を行う予定である。

ウーメラへの着陸許可

カプセルをウーメラに降ろすためには、「宇宙物体のオーストラリアへの着陸許可」(Authorisation of Return of Overseas Launched Space Object:AROLSO)を得なければならない。

JAXAは現在、オーストラリア宇宙庁と連携して許可取得手続きを進めており、7月14日にメーガン・クラーク宇宙庁長官と山川宏JAXA理事長の連名で共同声明を発表した。それによれば「申請は、オーストラリアの宇宙活動法に基づき承認される予定」とのことである。
声明文はこちら:小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセル帰還に関する豪州宇宙庁(ASA)との共同声明の発表について(JAXA 2020年7月14日発表)

新型コロナウイルス感染症対策のため、様々なところで制約が大きいが、オーストラリア政府からは積極的な支援が得られており、日豪両国の対策に適合した作業計画が可能だと見積もっているとのことであった。

記事:金木利憲