地球外試料キュレーションセンター(ESCuC) 取材

宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は2023年3月20日に小惑星探査機『はやぶさ2(hayabusa2)』のプロジェクト全体を総括する記者説明会を開催しました。その際に米国航空宇宙局(以下、NASA)の小惑星探査機『OSIRIS-REx』が地球に持ち帰るサンプルを受け入れるクリーンルームがある地球外試料キュレーションセンター(ESCuC)も公開されました。

地球外試料キュレーションセンター(ESCuC)

今回は、『OSIRIS-REx』が持ち帰るべヌーサンプルの機器構築準備中のクリーンルームの様子を見ることができるタイミングでの公開となりました。

第3惑星試料処理室の内部。まだ機器類は設置されていません。

クリーンルームは床の工事が終わり機器類が運び込まれるのを待っている状態です。逆L字型に見える銀色の床面のところに設置されますが、機器の構成としては『はやぶさ2』よりも小さくなるとのこと。これは、『OSIRIS-REx』のべヌーサンプルは気密されていない状態で持ち帰ってくるため真空下での開封装置が不要なためであり、そのほかの構成は『はやぶさ2』のリュウグウサンプルの装置に近い構成になるとのことです。

3Dプリンタで出力したベヌーサンプル用装置の模型(1/10サイズ)

第3惑星試料処理室の隣は、リュウグウサンプルを処理している第2惑星試料処理室がありますが、そちらの機器を見れば、実際の規模感がわかるかと思います。

リュウグウサンプルを処理している第2惑星試料処理室の機器

機器がサンプルによって専用になっている理由は「他のサンプルと混ざると汚染となる」ためであり、今後予定されている『MMX』のフォボスサンプルも専用の装置が用意される予定とのことです。

そのほか、ESCuCの廊下には『はやぶさ2』サンプルコンテナ帰還時に採取したガスが置かれていました。ボンベだけの展示ではなく、中にガスが封入されたままとのことで研究機関からの申し出があれば試料として提供するものだそうです。

帰還カプセル回収直後にウーメラで回収した希ガスがそのまま入っているボンベ

ボンベの他に、広報用のリュウグウサンプルが顕微鏡で拡大して見ることができる状態で置かれていました。国立科学博物館にあるイトカワサンプルとは明らかに大きさ、形、色などが違います。

広報用リュウグウサンプル(顕微鏡接眼部から撮影)。

今後もESCuCでは分析や分類、維持管理を行っていくそうです。相模原キャンパス特別公開などで見るチャンスもあるでしょうから、機会があればぜひ直接見て欲しい施設です。