宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と三菱電機株式会社(以下、三菱電機)は2024年12月10日、神奈川県にある三菱電気 鎌倉製作所で、新型宇宙ステーション補給機(以下、HTV-X)サービスモジュールを公開しました。
HTV-Xは『こうのとり』の愛称でも知られているHTV(H-II Transfer Vehicle)の後継機として国際宇宙ステーション(以下、ISS)への補給に用いられる無人補給機です。
HTVに比べ、貨物質量は約1.5倍の5.82トン、貨物容量は約1.6倍の78立方メートルとなり、輸送力が強化されました。また、HTVの特徴であったレイトアクセス(打上げ間近の荷物搭載)能力も引き継がれています。
HTV-XはISSへの補給だけではなく、軌道上での技術実証ミッションのプラットフォームとしても機能することが大きな特徴です。記者への説明では「二刀流」と表現されていましたが、開発に当たりHTV-Xは単なる補給機で終わってはいけないという意欲を持っていたそうです。
1号機では超小型衛星の放出、レーザー反射器と展開型軽量平面アンテナの実証が行われる予定です。HTVでもISSへ超小型衛星を運び、ISSから放出することは行われていましたが、HTV-XではISSより高い高度で放出することで超小型衛星の運用期間を長くすることが期待できます。
また、将来の国際有人月探査計画において、月を周回する有人拠点への補給を行う構想についても検討が行われています。
HTV-Xはサービスモジュールと与圧モジュールで構成されています。今回公開されたのはサービスモジュールの内、曝露カーゴ搭載部と、与圧モジュールとの接続部となる与圧モジュールアダプタを除いた部分です。
なお、与圧モジュールは三菱重工業株式会社で開発製造され、1号機の与圧モジュールは2022年8月に種子島宇宙センターへ搬入されています。
HTVでは与圧部に合わせるような形で全体的に円筒形をしていましたが、HTV-Xではサービスモジュールは八角形、与圧モジュールは円筒形と異なる断面を持ちます。
このようにHTV-Xは明確にモジュール分割がされていることから、HTVでは機体全体に貼られていた太陽電池パネルもHTV-Xではサービスモジュールから展開する形状となっています。
細部写真を掲載しますので、資料と照らし合わせてどの部分か確認してみて下さい。
HTV-X1号機は2025年度に打上げが予定されています。打上げられた9機全てが補給に成功した先代のHTVに負けない活躍を期待します。
文、写真:樋口厚志