昨日の記者会見で明らかになった小型月着陸実証機『SLIM』の太陽電池が発電できていない理由をいくつか考察してみた。
まず、状態としては電波の送受信はできていること。記者会見で地上局の運用を質問したのですが、月面着陸時は鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所にある34mアンテナを主局、長野県佐久市の臼田宇宙空間観測所にある64mアンテナを副局として運用、消感後は海外局を使ったという。
鹿児島県大隅半島の月の入り時間は01:06だったことから着陸後おおよそ30分で消感していると思われます。また、佐久市の月の入りは00:43分だったのでほぼ着陸前後に消感していると思われます。
偶然にもDeep Space Networkの稼働を見ており、23:30の段階でマドリード局での受信もしくは受信準備をしているのを確認していたのですが情報がなかったのとプレスセンターの電波状況が悪く検索するのも一苦労だったのです。
プレスセンターで記者会見が行われていた03:00頃、マドリード局での受信が確認できなくなった。ただしアンテナはSLIMとLEV1表示のままだったので、SLIM本体に異常が発生したのか、バッテリーが枯渇したのか状況は掴めませんでした。全データを受信できて電源をOFFにしたのなら良いのですが。
次に考えるのはSLIMの月着陸姿勢になります。
いくつかすぐに思いつく中で最悪なのは着陸時にひっくり返ってしまった場合。この場合発電はできないことは当然として探査機のダメージも相当あると思われるが、地上局とでデータを送送信していることから考えづらい。
それでは着陸した場所に大きな岩やクレーターの崖があった場合はどうだろうか。
模型を使って簡易的に検証したみた。大きな岩のそばに着陸した場合、その岩の影によって太陽電池に光が当たらず発電できない可能性はある。が、SLIMの着陸シーケンスでは画像処理によってこのような場所は避けるように自律制御されているのでこれは考えづらいのではないだろうか。
となると、個人的にありそうと思うのが『つんのめった』だ。
まず、着陸直後のテレメータ画面をみると、姿勢が”逆立ち”しているように見える。
太陽電池が見えており500Nスラスタが上にあるということは”逆立ち”している可能性を示唆している。実際に模型で簡易再現してみると、たしかに太陽方向によっては太陽電池に光が当たらず発電できない。
これならば、発電できず、かといって探査機本体のダメージもなく送受信が問題なく行えたという事象に一番適合するのではないか。2段階着陸の際に勢いが想定より大きくなりつんのめった姿勢で落ち着いた、というのが個人的な考えとなる。
いずれにせよ数日以内に記者会見が行われるので、そのときにどこまで判明しているのか今は待つしかありません。
(文:岡澤知行)