アリアン5:機体移動から発射までの流れ

1.打ち上げ結果

ベピ・コロンボを搭載したアリアン5  VA245は、2018年10月19日(金)22時45分28秒(現地時間)(10月20日(土)10時45分28秒(日本標準時))に、フランス領ギアナのギアナ宇宙センターより予定どおり打ち上げられた。
ロケットは計画どおり飛行し、打上げから約26分47秒後に両探査機を正常に分離したことを確認した。これをもってロケットの役割は終わり、打ち上げは成功した。
衛星側からすれば、これは運用の始まりを意味する。水星到着までは9回のスイングバイ(地球1回、金星2回、水星6回)を行う7年の長旅だ。到着してからの観測期間を加味すれば、10年を越えるプロジェクトになるであろう。無事を願う。

2.打ち上げまでのプロセス

アリアン5ロケットは、6週間の準備作業の後、打ち上げ前日に最終組立棟(Bâtiment d’Assemblage Final:BAF)から射点に移動する。移動方法は線路を使い、牽引はゴムタイヤのトラックで行う。移動にかかる時間は1時間少々である。

今回は機体移動(ロールアウト)の取材も許可されたので、写真で紹介する。

打ち上げ前日(10月18日:現地時間)の午前中、BAFの扉が開く。扉は縦開きで、四枚の引き戸を下から順番に引き上げていく。10分ほどで全開だ。この時、組み上がったロケットの全体像が初めて外に現れる。

この後、より近づくことができた。

数十メートルの所から機体を見上げる

牽引用トラック
トラックとローンチテーブルとの連結部。向かって右側がロケットの載っていないとき、左側が載っているときに使用するフックである。
移動用の線路。複線である。
ローンチテーブルの下、機体のほぼ真下まで行くことができた。

扉が開いた後は確認作業などを行い、移動開始となる。今回は11時45分-12時51分(現地時間)だったので、1時間6分であった。

移動開始、BAFから姿を現す。個人的には最もわくわくする瞬間だ。

移動中に道路を横切る。フェアリングの先端からブースターのノズルの先まで、ロケット全体が見えるポイントだ。
移動終了。4本の避雷針に囲まれた中央が定位置である。固定はハードポイントにピンを入れる形で行われる。
台車。4輪4組でワンセット、これがローンチテーブル一つに4台付く。合計52輪である。
打ち上げを控え、射点に据えられたロケットを正面から撮る。左右の煙道とあいまって完璧なシンメトリーとなっている所に、左側の水タンクの塔がアクセントとなっている。とても美しい構造だった。

射点に着くと、推進剤の供給パイプの結合や各種点検を行う。燃料供給開始は打ち上げの4時間半前なので、今回の場合は10月19日の18時15分頃となる。

このため、打ち上げ当日の午後一番のプレスツアーで、ロケットから900mほどまで近寄れている。

供給は発射数秒前まで行われる。アリアン5はカウントゼロでメインエンジンをスタートさせ、+7秒で左右の固体ロケットブースタに点火、発射台を離れる。-3秒でメインエンジン点火、ゼロで固体ロケットブースタに点火して離床する日本のロケットとは、カウントダウン方法が異なっている。

アリアン5は、機体サイズ的には日本のH-IIBを一回り大きくしたくらいである。2段式かつコアステージの燃料は液体酸素/液体水素、ブースタは固体燃料という点は共通しているのだが、ロールアウト~発射までの流れには異なる点がある。比較してみると運用や設計の思想の違いが見えてくるので、非常に興味深い。

(記事:金木利憲)