いぶき2号(GOSAT-2)報道公開に行ってきました

2018年8 月11 日( 土)
東京駅から8時半のつくば行きの高速バスにのれば、途中の停留所(並木1 丁目)がJAXA つくば宇宙センターの目の前です。東京駅はお盆でスーツケースの人で溢れかえっていました。
とびもの学会として参加される3 人めの方もバスに乗れたらしく(待ち合わせはしていなかった)、同じバスでつくばに向かいます。
が、ここでトラブル発生。常磐道が渋滞で思うようにながれない! 我々は取材でも世間は夏休み&お盆、バスも満席でした(筑波大学で説明会があったらしい)。
報道公開の開始は10:20。バスの予定到着時刻は9:30 だが、どう考えてもこんなスローペースでは間に合わない。前日からつくば入りしていたメンバーと連絡をとり、あとは早く着くのを願うのみ。
結局到着したのは10:35 ごろ。報道の説明はほぼ終わっていましたが、「いぶき2 号」への移動はまだとのことで一安心。間に合ってよかった。
報道席の壇上には先代の「いぶき」に搭載されていたTANSO-FTS の地上試験モデルが飾ってありました。このセンサーは二酸化炭素・メタンなどの温室効果ガスを計測する、「いぶき」の一番大事なミッション機器です。なんと実際に動作もしており、アームが左右に振れることで刈り幅を生み出しているのがよくわかります。光がどのような経路をたどってセンサーに入るのか、ガスを本当に見分けられるのか、実演でわかるんだから素晴らしい展示ですよ。
ポリ袋の中にガスを入れて実験し、それがモニターで確認できるようになっていました。といっても遅刻したので実験の様子は見れなかったのですが……。あまりこのような展示は見かけないので、非常に興味を持って眺めていました。


TANSO-FTS の地上試験モデルとのこと。左上のアームが左右に振れていました。

11:00、バスに乗車し宇宙センター内の総合試験棟へ。臨時の構内証、記者の腕章、カメラの撮影許可証。
「いぶき2 号」にお目見えするには身体のけがれを落とせ……ということで、防護服とマスクを着用し、なるべく汚れ・埃を持ち込まないようにします。そしてエアシャワー室に入り、30 秒間回りながら風を浴びてゴミを落とします。思ったよりも風は弱かったかな? この日は教育・広報として子供も参加していました。子供たちは付き添いのお兄さんに「エアシャワーダンスだ!」と教えられ、手を挙げながらくるくる回るほほえましい光景が。エアシャワーダンスね、いいこと覚えましたよ。
さてさていよいよご対面。だだっぴろい部屋の中、中央に金色の箱型が鎮座していました。念願(?)の「いぶき2号」です。 圧倒的! というほどの大きさではありませんが、背丈を軽々超える大きさには驚かされます。これが、目の前のこのデカブツが宇宙に行くのかと思うとため息がもれます。これが本当に宇宙に行くんだ……。今まで多くの衛星の展示を見てきましたが、やっぱりホンモノは違うなあ。魂が宿っているとかまでは感じませんでしたが、胸が高鳴ります。

 
「いぶき2号」全景

機体の高さが5.3m。先代より長細い形状になっています。下が衛星としての基本的な機能を受け持つバス部、上がミッション機器を載せた部分という2段構造がよくわかります。
機体を全方位から眺めることのできる貴重な機会。じっくり眺めさせてもらいました。
センサーには覆いがかぶせられ、太陽電池はまだ取り付けられていません。太陽電池パドルは種子島でつけるそうです。つくばではすべての試験を終えていますが、種子島に運ばれてからパドルを装備し、電気的な確認を行うとのこと。


太陽電池パドルの受け口。青色のウレタン素材で養生されているのは放熱面

センサーは上がメインのTANSO-FTS-2、下が雲・エアロソル判別用のTANSO-CAI-2。FTS の方は青いシートの奥に赤いプレートが見えました。


メインセンサのTANSO-FTS-2。青色透明素材のシートで養生されている

太陽電池パドルが付いていないということは、展示では見れないパドル裏が見られるということ。放熱面もパドルの軸の受け口もバッチリです。
裏側も拝見。スタートラッカーは思ったよりも大きさがありました。またバス部にはGPS 用のアンテナが。あれ、GPS なんて使ってるのかと思いましたが、先代「いぶき」から軌道決定・姿勢制御に使っているようです。ちなみに細長いアンテナは、金属のフレームで囲われています。例えるなら消火栓の赤いランプの防護と同じ。
足元に目をやると、PAF 結合部やらドーリーやらも気になります。


上:衛星台車(ドーリー) 下:衛星結合部

スラスタ部分には「NON FLIGHTITEM」の赤い小さなタグが。航空機だと大きい「REMOVE BEFORE LIGHT」が一般的だと思いますが、表記が違うのですね。結合クランプはQZS-1、つまり「みちびき」初号機の使いまわし。ドーリー自体もクレーンのように動き、衛星を横向きに吊るすことができます。
さらに隣には、衛星を運ぶためのコンテナが準備されていました。側面には温度調節用の制御盤、これで空調ばっちりの快適な種子島旅行ができるわけですね。


衛星運搬用のコンテナ(下半分)

続いて案内されたのはスペースチャンバー。直径13m ですから……とにかくでかい! 当たり前です、さっきの「いぶき2号」がすっぽり収まるサイズなのです。下のハッチは人間用ですから、チャンバーは圧倒的に大きいです。この中で冷却(液体窒素)・加熱(太陽光を模したランプ)が行われ、宇宙環境に近い温度での試験が行えます。


φ13mスペースチャンバ。民間向けに有料貸し出しサービスも実施中

こうして戻って時刻は12 時半ごろ。このあと囲み取材やらテレビ用の取材やらが行われていました。無事打ち上がってくれよ、GOSAT-2「いぶき2 号」よ。

注:本記事は、コミックマーケット94で頒布した『いぶき2号報道公開に行ってきました』(発行:迷衛星研究室)を元に再構成したものです。

(記事:村上貴広)