2026年4月24日、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)よりH3ロケット6号機(30形態試験機)(以下、H3ロケットF6)の打上げ日は2026年6月10日、打上げ時刻は9時53分59秒~11時52分46秒と発表されました。
その後、打上げ日2日前(2026年6月8日)の記者会見で、打上げ当日の天候の悪化が予想されるため打上げを延期することが発表されました。この時には新しい打上げ日は発表されませんでしたが、翌日に6月12日に打上げと発表されました。
6月10日には打上げ時刻が9時53分59秒、打上げ時間帯は9時53分59秒~11時52分46秒と発表。初の30形態となるH3ロケットF6の打上げ日時がいよいよ確定しました。
H3ロケットF6の打上げで注目される点は、第一に固体燃料ブースターがないロケットでの日本で初めての衛星打上げとなることです。1段エンジンのLE-9は既に14基が問題なく飛行しているので大きな問題はないと考えられますが、ホールドダウンシステムという機構が正常に動作するか関心が寄せられています。固体燃料ブースターは重いため、1段エンジンが打上げ推力に達しても固体燃料ブースターに点火するまではリフトオフできません。しかしH3ロケットF6では固体燃料ブースターがないので、1段エンジンの点火から打上げ推力に達するまでロケットが浮き上がらないように押さえ込む機構が必要です。これがホールドダウンシステムです。固体燃料ブースターがあるH3でもホールドダウンシステムは使われていますが、この場合は解除のタイミングはリフトオフの18秒前頃です。30形態のH3ロケットF6ではリフトオフの瞬間に4つ全てを同時かつ確実に解除する必要があります。リフトオフ前にホールドダウンシステムの解除する場合は、解除に失敗した場合は打上げを中止できますが、30形態ではホールドダウンシステムの解除失敗が打上げの失敗に直接つながりかねません。
第二に注目されるのは、半年前に打上げ失敗となったH3ロケット9号機の失敗対策が有効かという点です。H3ロケットF6の打上げは30形態の試験機であると共に、H3ロケット9号機の失敗原因であったPSS(衛星搭載アダプタ)への補修が適切であるかの検証を行う試験機にもなりました。
2026年6月11日(金)
打上げ前日の6月11日夕刻、取材班は種子島宇宙センターの竹崎地区にある旧小型ロケット発射場付近に陣取り、H3ロケットF6がVAB(整備組立棟)から射点へ移動する様子を見守りました。
夕暮れの明かりがほんの少し残る19時30分、予定通り機体移動が開始されH3ロケットF6が姿を現しました。取材班にとっては5月24日の機体公開以来、18日ぶりの再会です。



30分ほどで機体移動は完了。この頃には辺りはすっかり暗くなっていました。


21時40分頃、VABから射点までロケットと移動発射台を運んだドーリーが回送される様子を見ることができました。



機体移動の完了後、大崎地区の旧中型ロケット発射場付近に移動してロケットを撮影しました。この場所は打上げ準備に伴う立入規制がされるまでの間に一般人が入れるロケットに最も近い場所と思われます。
2026年6月12日(金)
打上げ当日、取材班は長谷展望公園と、長谷地区の観望ポイントに分かれて打上げの瞬間を待ちました。


長谷地区から(左写真)と、長谷展望公園から(右写真)撮影したH3ロケットF6
レンズの焦点距離は異なるため、距離感の比較にはならない
打上げ手順は順調に進み、9時53分59秒、いよいよリフトオフの時が来ました。



H3ロケットF6リフトオフ 長谷地区より



H3ロケットF6リフトオフ 長谷展望公園より
カウントゼロの瞬間、今までのロケットでは固体燃料ブースターの眩い光でリフトオフしたことを感じることができましたが、今回はそれがない上に上昇スピードもゆっくりだったため肉眼ではリフトオフを確認するのに少し時間がかかりました。
光は固体燃料ブースターがないため、今までのH3ロケットに比べて明らかに暗いものでした。そのかわりメインエンジンであるLE-9からの炎はこんなにも長いというのが分かりました。今までは固体燃料ブースターの炎でLE-9の炎は隠されていたのです。
音も固体燃料ブースターありに比べて小さく感じましたが、それでもロケットの迫力ある轟音を全身で感じることができました。
打上げ経過記者会見で、H3ロケットF6は計画通りに飛行し、6機全ての衛星が分離されたこと、衛星の分離後に2段ロケットを逆噴射させ予定の海域に制御落下させたことが発表されました。
H3ロケットF6の打上げは見事に成功しました。

打上げ経過記者会見
第一部 登壇者フォトセッション
左より
三菱重工業株式会社 江口 雅之 常務執行役員 防衛・宇宙セグメント長
JAXA 山川 宏 理事長
文部科学省 古田 裕志 大臣官房審議官(研究開発局担当)
内閣府 西野 聰 宇宙開発戦略推進事務局 参事官

打上げ経過記者会
第二部 登壇者フォトセッション
左より
三菱重工業株式会社 北山 治 防衛・宇宙セグメント 宇宙事業部 H3プロジェクトマネージャ
JAXA 有田 誠 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ

打上げ経過記者会見
第三部 登壇者フォトセッション
左より
株式会社BULL 河村 政昭 CTO
Space BD株式会社 李 美亜 ローンチサービス事業ユニット 事業ユニット長
静岡大学 能見 公博 工学部 教授
以下、リモート参加者
左上:東京科学大学 谷津 陽一 理学院 准教授
下:JAXA 小松 雄高 研究開発部門 超小型・小型衛星宇宙実証研究ユニット ユニット長
右上:九州工業大学 佐野 圭 助教
H3ロケットF6の打上げから3日後には、早速次の打上げとなるH3ロケット9号機による、みちびき7号機の打上げ日時が発表されました。H3ロケット8号機の失敗前から多くの衛星が打上げを待つ状況でしたので、今後は比較的短い間隔で打上げが続くものと予想されます。
2度の失敗を乗り越えたH3ロケットが、日本の真の基幹ロケットに成長していく姿を今後とも見守り続けたいと思います。
文:樋口厚志
写真:渡辺祥馬、樋口厚志